欧州麻酔科学会

表題

2007年6月10日 欧州麻酔科学会


体内植込型脊髄刺激装置のIH調理器電磁波防護に成功
浜松医科大学共同研究グループが欧州麻酔科学会にて発表


浜松医科大学 麻酔・蘇生科 五十嵐寛 久米容子 佐藤重仁
大阪府立産業技術総合研究所 信頼性・生活科学係   松本元一
メディカル・エイド株式会社 取締役COO 松井 英樹

各種資料

英語版(English)日本語版(Japanese)

体内植込型の脊髄刺激装置(以下SCS)は従来の療法では軽減できなかった 慢性の痛みを和らげるのに効果がある。慢性疼痛疾患(腰痛や線維筋痛症など) を有する患者が、在宅でも自分で痛みをコントロールできる最先端の医療器具で、 今後も幅広く普及していくと思われる。この器具は完全に電磁波シールドする事が構造上不可能な点があり、不要な電磁干渉を受けて動作不良を起こすことがある。国立浜松医科大学と電磁波防護服開発メーカーメディカル・エイド社(本社:大阪府和泉市) がSCS用電磁波防護服を開発し、6月10日にドイツのミュンヘンで開催された欧州麻酔科学会にて発表され、 今後は必要性が高くなる研究として評価された。

1.開発の経緯と学会発表

  • (ア) 浜松医科大学付属病院のSCS装着患者がIH調理器を使用したところ、 上肢や胸部などに痺れを感じ、非常に不快な異常感覚が誘発された。この症状は、 患者がIH調理器を停止すると消失した。
  • (イ) 厚生労働省より、IH調理器や盗難防止装置などの機器に対する 「医薬品・医療用具等安全性情報が出されている。
  • (ウ) 浜松医科大の五十嵐寛講師が患者の依頼を受け、 各種電磁波防護服の開発メーカーであるメディカル・エイド社に共同研究を依頼し、 平成18年6月より共同研究がスタートした。
  • (エ) メディカル・エイド社はすでにIH調理器用の妊婦用エプロンやペースメーカ用 電磁波防護服の開発に成功し、実用化の実績のある会社である。 これらの防護服には高透磁率磁性シートと 導電フィルムを多層化することにより、厚さわずか0.6mmで IH調理器から発生する20~50kHzの低周波磁界を99.9%シールドする EMSシートが用いられている。
  • (オ) SCS用電磁波防護服の性能は人体ダミーを使用した試験を実施した上、 患者の協力により実際にIH調理器を使用する臨床試験を計3回実施し、 その都度EMSシートの形状に改良を加え、完全防護に成功した。
  • (カ) 本年6月10日にドイツのミュンヘンにて開催された欧州麻酔学会で上記の研究を発表し、高い評価を受けた。

2.開発の背景

現代社会において携帯電話、家庭用電子機器、IH調理器、さらにはセキュリティー装置や交通機関におけるICカード等の普及により、これらから発せられる電磁波が引き起こすと言われている機器の動作不良の危険性が増加している。そのため、SCS患者やペースメーカ患者は就労や日常生活に制限を受けている。電磁波防護服を着用することによりこれらの課題が解決あるいは改善することが可能であると考えられ、患者にとって生活面でも就労面でもQOLの安定および向上が可能になる。

<お問い合せ先>

  • 浜松医大付属病院 臨床医学教育学講座 特任教授 五十嵐 寛
  • 住所:〒431-3192浜松市半田山1‐20-1
  • ホームページ:臨床医学教育学講座